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【ネタバレ映画感想】エリジウム

マット・デイモン主演のSFアクション映画

エリジウムを観た感想

 

映画の舞台は,超格差社会となった近未来の地球.富裕層は宇宙のコロニー「エリジウム」で暮らしており,貧困層は荒廃した地球に住んでいるという設定.マットデイモン演じる主人公マックスは,地球での不当な労働中に事故で全身を被曝して余命5日を宣告される.助かるためにはエリジウムで治療を受けるしかないので,なんとか頑張ってエリジウムに行こう

 

というのがあらすじ.

 

以下,所感である

 

  1. 哲学的な奥ゆかしさはない
    インターステラーやオデッセイといった,2015年辺りに流行した哲学的な倫理観を問う舞台として宇宙を据えた映画ではない.SFアクションらしく,俺達の大好きなマットデイモンが,泥と血に塗れながら控えめに暴れる映画だった.

  2. 大味系の映画にしては煮え切らない
    この映画はあくまでSFアクションだが,それにしては上手く燃え尽きていない気がした.キャラクターのストーリーとマックスを痛めつける時間に尺を大きく割いているため,肝心のアクションがこじんまりとしている.かと言ってそれぞれのキャラがそこまで深く掘り下げられる訳ではなく,雑な展開が悪目立ちする(敵だった奴がいつの間にか非常に協力的になっている,特に実害を与えられていない人間を復讐の対象にするなど).また,時間の経過スケールも不明なためマックスの余命リミットが差し迫ってくる緊張感もない.半端な人間模様に頭を使わされる割には奥行きはないので,もっとアクションに振り切って,マックスに航空機で暴れてもらったり,武器に詳しい良い感じのキャラとバディを組んだりして装備に言及しながら死線を潜り抜けて友情とか育んで欲しかった.

  3. 世界観が良い
    エリジウムと地球の物理的,文化的距離感はとても分かりやすく描かれていた.地球の人類が英語の他にスペイン語を話していたのは,トランプ政権への風刺だろうか…この映画の設定からして資本主義社会を揶揄しているのは明白だが.

  4. 主人公の動機が利己的でうまく感動できない
    自分が死にたくないからという理由よりも,誰かを助けるためという方が感情移入しやすい気がする.リアリティはあるけど.

 

そんな感じ

「物理精神の両面から閉鎖された宇宙という圧倒的なスケールの中で描かれる一握の哲学ーー」みたいなものは期待できないし,するべきではない.

 

 

マットデイモンについて蛇足

 

同じハードボイルドなハゲという枠で括られるブルースウィリスやジェイソンステイサムは,いわゆる「最強系主人公」であるのに対し…

 

不利な状況からスタートする

別にそんなに強くない

理不尽な暴力に晒される

友人や恋人が巻き添えをくらう

 

…という中でなんとか頑張ってみるキャラクターを演じることが多い印象

 

エリジウムもそんな感じ.

 

おすすめの一曲

 「琥珀色の街、上海蟹の朝」-くるり-


くるり - 琥珀色の街、上海蟹の朝

2016年発表の名曲.
PVがアニメーションになっているが,敢えて観ないで書いている.

全体的に物悲しい印象を漂わせる奥ゆかしい歌詞と旋律が特徴.曲を通して「君」と「俺」の2人が登場し,「俺」が街へ向かう「君」へ語りかけている.個人的に,この「街」ブレードランナーに登場するような,近未来的だが陰鬱で退廃した街を想像した.なぜだろう.後述の,時間の表現のせいかもしれない.

 

タイトルの琥珀色は,かはたれ時を表しているような気がする.

歌詞にも 止まった時計は 夜明け前5時 とある.

 

最初のサビまで,ラップ調というか,語り口調のメロディが続く.

それが「君」への語りかけを強調している.

サビからは打って変わって中華風のメロディとなる.

 

歌詞から,「俺」は ”この街を去って” おり,街にいる「君」に ”実を言うと この街の奴らは義理堅い” と,街について助言していることが分かる.また,この街は現在もしくは未来であり,街から去ることは過去を漁ることであるといった,抽象的な時間の描写がある.

もしかすると,「俺」は既に過去の人間であり,後から街に来た「君」へ,遠くから届かない声をかけているのかもしれない.そして,サビでは遠くへ行ってしまった「あなた」へ,「君」から「俺」に向けて返しているのかもしれない.

 

この曲のような,決まったテーマが無い(掴み辛い)曲が大好き.抽象的な世界観があるとつい現実世界との対応を考えるが,そんなものはないのかもしれない.